・歯医者さんに行くのが怖いと感じる子どもが多い
・治療中に泣いたり動いてしまうことがある
・親としてどう声をかければいいか分からない
・子どもにとって安心できる環境をつくりたい
・治療をスムーズに進めたい
歯科治療は大人でも緊張するもの。子どもならなおさらです。治療中に安心してもらうためには、周囲の声かけがとても大切です。この記事では、なぜ子どもが不安になるのか、どんな声かけが安心感を生むのか、年齢別の具体例とともに分かりやすくご紹介します。この記事を読むことで、子どもの不安をやわらげ、スムーズに治療を受けてもらうためのヒントが得られます。最終的には、子どもが「歯医者さんは怖くない」と思えるようになることが目標です。
治療中の子どもが不安を感じる理由
子どもが歯科治療に対して不安を感じるのは、決して珍しいことではありません。むしろ、ごく自然な反応です。その理由は、子ども特有の感受性や経験の少なさに起因しています。
まず、歯科治療という環境自体が非日常的です。大きな椅子に座らされ、口を開けたまま動けない状況に置かれることは、子どもにとって大きなストレスです。加えて、見慣れない器具や聞き慣れない音、不快な感覚などが重なり、不安や恐怖を引き起こします。
また、過去に歯医者さんで痛い思いをした経験がある場合、それが強く記憶に残っていることもあります。大人に比べて痛みに敏感なうえ、「何が起こるのか分からない」という不確実さが、恐怖心をより増幅させるのです。
さらに、親が緊張していたり、「痛くないから大丈夫よ」と繰り返している場合も、逆効果になることがあります。子どもは大人の表情や言葉から感情を読み取るのが得意です。「何かあるのかな?」と余計に不安になってしまうのです。
このように、子どもが治療中に不安を感じる背景には、「未知の環境」「過去の体験」「感受性の強さ」「大人の影響」など、さまざまな要因があります。だからこそ、声かけを通じて少しでも安心できるようにしてあげることが大切なのです。
声かけが子どもの安心感につながる仕組み
歯科治療中に行う声かけには、子どもの心を落ち着かせ、不安を和らげる大きな力があります。これは単なる「言葉」ではなく、子どもとの信頼関係を築くための重要なコミュニケーション手段なのです。
まず、声かけには「状況の理解を助ける」という役割があります。子どもは自分の身に何が起きているのか分からないことが多く、不安を感じます。そこで、「これからお口の中を見せてね」「お薬をぬるだけだから痛くないよ」といった説明をやさしく伝えることで、先の見通しが立ち、不安を軽減できます。
また、声かけは「安心のサイン」でもあります。落ち着いた声でゆっくり話しかけられると、子どもは「大丈夫なんだ」と感じ、気持ちが落ち着きやすくなります。これは心理学的にも、「安心できる大人がそばにいる」という感覚がストレスを緩和するとされているからです。
さらに、声かけには「肯定的な自己認識を育てる」効果もあります。治療中に「よく頑張ってるね」「すごいね」と褒められると、子どもは自信を持ち、「自分はできる」と思えるようになります。これが、歯科治療に対する苦手意識の軽減にもつながっていくのです。
このように、声かけは単なる気休めではなく、子どもにとって必要不可欠な安心材料です。治療を受けることだけでなく、「治療に前向きになれる心」を育てるためにも、丁寧で前向きな声かけがとても重要になります。
効果的な声かけのポイント
歯科治療中に子どもを安心させるためには、ただ声をかけるだけではなく、「どう伝えるか」がとても大切です。ここでは、実際に効果が高い声かけのポイントを紹介します。
まず意識したいのは、「シンプルで具体的な言葉を使う」ことです。子どもは抽象的な表現や難しい言葉を理解するのが苦手です。たとえば、「ちょっと我慢してね」よりも、「いま3つ数えたら終わるよ」といった具体的な指示の方が理解しやすく、安心感につながります。
次に、「安心を伝える語調」です。早口や高い声では不安をあおってしまいます。ゆっくりと落ち着いたトーンで話しかけることで、子どもは「この人の言うことは信じられる」と感じるようになります。
さらに、「ポジティブな言葉選び」も大切です。「痛くないよ」と言うと、かえって「痛いの?」と疑ってしまう子もいます。代わりに、「チクっとするけどすぐ終わるよ」や「あとちょっとでおしまいだよ」といった前向きで現実的な表現を心がけましょう。
そして、「気持ちを認める声かけ」も欠かせません。「怖いよね。でもがんばってるよ」といったように、子どもの感情を受け止めてから励ますと、気持ちの安定につながります。一方的に頑張れと押しつけるのではなく、共感を大切にした言葉が信頼感を深めます。
最後に、「成功体験を褒める」こと。治療が終わった後、「すごく頑張ったね」「先生もびっくりするくらいじょうずだったよ」としっかりとほめることで、子どもは自己肯定感を高め、次回の治療への不安が減っていきます。
これらのポイントを意識することで、子どもにとっての歯科治療は「ただ怖いもの」ではなくなり、「できた!」「がんばれた!」という前向きな経験へと変わっていきます。
年齢別に見るおすすめの声かけ例
子どもの年齢によって、理解力や反応のしかたが異なるため、声かけも年齢に合わせて工夫することが大切です。ここでは、未就学児、小学校低学年、高学年の3つの年代に分けて、それぞれに適した声かけの例をご紹介します。
未就学児(3~6歳)
この年齢の子どもは、言葉で状況を完全に理解するのがまだ難しく、感情や感覚が優先されがちです。安心感を与えるためには、短く分かりやすい言葉と、身体的な安心(手を握る、目を見て話すなど)が効果的です。
・「いまからおくちをあーんするよ、ちょっとだけね」
・「〇〇ちゃんのおくち、先生が見てくれるだけだよ」
・「終わったらシールもらえるよ!がんばろうね」
小学校低学年(7~9歳)
少しずつ論理的な理解ができるようになり、自分の気持ちを表現する力も高まってきます。状況を説明しつつ、安心できる言葉をかけてあげましょう。
・「ちょっとだけチクっとするけど、すぐ終わるからね」
・「いま〇〇を使ってるけど、大丈夫だよ。音だけだからね」
・「もう半分終わったよ、がんばってるね!」
小学校高学年(10~12歳)
この年齢になると、ある程度大人と同じように理解できる力があり、プライドや自尊心も育っています。子ども扱いしすぎないことが大切です。
・「もうすぐ終わるよ、あとちょっとだけ力を抜こうね」
・「〇〇くんがしっかりしてるから、先生もやりやすいよ」
・「自分でがんばろうとしているの、伝わってるよ」
年齢に応じた声かけは、子どもにとって「自分のことを理解してくれている」という安心感につながります。こうした積み重ねが、歯科治療への信頼や自信を育てる基礎になります。
終わりに
子どもが歯科治療中に不安を感じるのは、ごく自然なことです。しかし、周囲の大人が適切に声をかけることで、その不安はぐっと和らげることができます。大切なのは、子どもの気持ちに寄り添いながら、年齢や理解力に合った言葉で、やさしく、落ち着いて伝えることです。
声かけは単なる励ましではなく、子どもとの信頼関係を築く大切なコミュニケーションのひとつです。子ども自身が「がんばれた」「怖くなかった」と感じることができれば、それが次の治療への前向きな一歩になります。
今回ご紹介した内容を参考に、子ども一人ひとりの気持ちに寄り添った声かけを実践してみてください。保護者の方、歯科スタッフの方、そして何より子ども自身が、安心して治療に向き合えるような環境づくりが、なによりも大切です。やさしい言葉の力が、子どもの勇気を引き出します。